キムチ納豆について
納豆とキムチの相乗効果が血栓の詰まりを予防し
腸内を大掃除する
納豆とキムチには微生物が生きている
納豆とキムチ、2つの食材の共通点は、ともに発酵食品であるということです。発酵食品というのは、自然界から混入した微生物によって生成されたものです。
世界中に発酵食品は数多くありますが、そのなかでも生きた菌が入っている数少ない食品が、納豆やキムチです。微生物が生きているということは、納豆やキムチには単なる栄養分でなく生きた菌が体調を整える力があるとも考えられます。
アメリカで最近流行のいわゆるマクロバイオティックス、おなかの中から健康になるという考え方ですが、東洋には昔から経験的にそのような知恵があったのかもしれません。
ところで、病気の多くは血のめぐりが原因で引き起こされます。実際、日本人の死亡原因で、血のめぐりが原因で起こる症状(心筋梗塞・脳梗塞・痴呆症など)を合計すると、ガンに匹敵するほどです(表参照)。
その原因となるのが、血栓です。本来、血栓は常につくられ、分解されるものです。ところが、加齢やストレスによってうまく分解されないと、血のめぐりが悪くなり心筋梗塞、脳梗塞、痴呆症などを引き起こす原因となるのです。
そこで、注目したいのが納豆の血栓溶解作用です。そのパワーは世界中の食べ物のなかでもナンバー1といっていいほどです。
血栓はフィブリンという特殊なタンパクが主成分です。このフィブリンを分解する酵素は、ほとんどありません。納豆にはナットウキナーゼというフィブリンを分解する酵素があるのです。
さらにキムチに含まれているニンニクには血小板の凝集反応を抑える作用があり、血栓をつくりにくくします。すなわち、キムチ納豆には、キムチのニンニクによって血栓ができにくくなり、さらに納豆のナットウキナーゼが血栓をとけやすくするという相乗効果があるのです。
乳酸菌:キムチ発酵の主役、乳酸菌。キムチに特に多く含まれるというラクトバジルスは代表的な善玉菌で整腸作用があり、腸をきれいにしてくれる。
豊富なビタミン類:加熱せずに作るため、主材料の白菜や大根、きゅうりといった淡色野菜に含まれるビタミンCを壊さずに摂ることができる。また新鮮な野菜の液汁が発酵する過程でビタミンB1、B2、B12、ニコチン酸なども作られることがわかっている。
タウリン:アミノ酸の一種で、キムチの材料となる塩辛などの魚介類に多く含まれている。血液中のコレステロールを減少させたり、肝臓の解毒能力を強化したり、視力を回復させたりといった体を正常にするはたらきをもっている。
納豆菌がキムチの乳酸菌の増殖を助ける
キムチには1g中に何億という乳酸菌が存在します。乳酸菌は、いわゆる善玉菌のこと。健康な人ならたいへんな数を持っていて、腸内をきれいにしてくれます。ところが、体が弱るとその数が減少します。
そこで乳酸菌を外から摂取するわけですが、最近の研究で納豆菌を乳酸菌といっしょにとると、乳酸菌の増殖を助けることがわかりました。まず納豆菌が食べ物を分解し、それを乳酸菌が餌にして成長していく、そして納豆菌がつくり出したグロスファクター(成長因子)を使って、キムチの乳酸菌が増殖するのです。ですから、キムチ納豆は乳酸菌を効率的に腸内にとり込むという意味でも非常に意味のある食べ合わせです。
また、たいへん都合のいいことに、納豆菌はO-157やコレラ菌などに対しては、菌の増殖を抑制する作用があります。つまり、納豆は、乳酸菌などの善玉菌の増殖を助け、悪玉菌の増殖を防ぐ力があるのです。
さらにキムチ納豆は、日本人の死亡原因のトップであるガンも予防します。大豆の抗酸化作用は納豆になることで4倍にもアップしますし、キムチの乳酸菌が腸をきれいにすることでガンを予防するのです。
また最近、納豆に含まれているビタミンK2には骨粗鬆症を予防する働きがあることもわかりました。しかもビタミンK2は納豆特有の成分といっていいものです。
骨粗鬆症は、骨が弱くスカスカになる症状です。とくに足のつけ根が折れた場合、完治することはむずかしく、結果として寝たきりや、痴呆へと進行していきます。
骨を丈夫にする成分としてはカルシウムが有名ですが、カルシウムは単独で補給しただけではなかなか骨には付着しません。ビタミンK2はカルシウムを付着させる一種の糊(オステオカルシン)をつくるために必須の成分なのです。オステオカルシンがあれば、補給されたカルシウムは骨にベタベタとくっついていくわけです。
男性に多い心筋梗塞などの血管系の病気、近年女性にとって深刻な悩みである骨粗鬆症と、キムチ納豆は性別を問わず効く食べ合わせといえます。血栓予防や骨の強化という意味では1日1パック食べれば十分です。元気な状態で長生きするために、ぜひ毎日の食卓にキムチ納豆をとり入れてみてください。
倉敷芸術科学大学教授・医学博士/須見洋行 先生
●先生のプロフィール
すみ・ひろゆき
1945年生まれ。山梨大学工学部発酵生産学科卒業、徳島大学大学院修了。宮崎医科大学助教授をへて現職。専門は血栓の研究